死のクレバス

著者   J.シンプソン  中村輝子 訳
出版社  岩波現代文庫
発行年  2000年

 難しい氷壁初登攀の成功後、下降中にジョーが骨折、宙づりとなる。ザイルの切断を余儀なくされたサイモンは、ひどい凍傷をかかえてやっとキャンプにたどり着き、休養の後キャンプを引き払う前夜、死んだはずのジョーが現れる…
 孤独と不安、パートナーへの猜疑、死への恐怖など、極限状況における人間内部の葛藤と傷ついた肉体との格闘を克明に記した、迫真の山岳ノンフィクション文学。
 のちに「運命を分けたザイル」として映画化された。

ロングトレイルという冒険

著者   加藤則芳
出版社  技術評論社
発行年  2011年

 「高みばかりではなく、自然そのものへの畏敬、憧憬の念がそこにはある。森の威力はとりわけ大きい。・・人の本来あるべき姿に引き戻してくれる力が森や樹木にはある。」
 「森は知性の宝箱だ。特にブナの森には賢者の風格がある。」
 アメリカのロングトレイルを紹介し、日本の国立公園にも触れ、森を愛し、自然を愛する筆者が歩きながら積み重ねた思索の軌跡、自然への畏敬の念を綴った、自然に対する深い思いが感じられる1冊です。
 (この本を出した2年後、加藤氏はALSでお亡くなりになられたと後で知りました。ご冥福をお祈りいたします。)

探鳥の山旅

著者   大津雅光
出版社  白山書房
発行年  2015年

 四季にわたって野鳥や花に満ち溢れた山野をたどる「探鳥の山旅」紀行六十編。
 ヘッドランプ点けて早朝の山道を行くとき、早くも鳴き出すシジュウカラやホオジロ、苦しい登りで一休みしたときに聞こえてくるコマドリやオオルリ、高原のカッコウやウグイスなどのさえずりに心が洗われ、元気づけられたことは誰もが経験されていることでしょう。
 キビタキはフィリー、ピッポロ、ピッポロ、ピッポロ、ピィリリィ・・・とか、ホオジロの、チョッピーチリリリチョロチリリリチチッ などの鳥語の表現もとても楽しい。
 登山口からの丁寧かつ的確な情景描写は、地図を広げて読んでいると、家に居ながらも本当に山を歩いている気分で楽しめます。
 自然に親しむ山歩きをしたい人に贈る一冊です。

山の自然学

著者   小泉武栄
出版社  岩波新書
発行年  1998年

 山歩きをもっと楽しもう。そのために日本の自然をもっと知ろう。
 「早池峰山はなぜ森林限界が低いのか」、「妙義山のあの尖峰はどのようにしてできたのか」など、植物分布や地形・地質の不思議さを、特徴ある各地域の山々をとりあげて解説した自然学入門の本。
 好奇心と、自然の不思議さに感動する心があれば、自然のおもしろさが見えてきて新鮮で豊かな楽しみを味わうことができる。
 日本の山はこんなに多彩で面白い! 

野生のベリージャム

著者   小島聖
出版社  青幻舎
発行年  2018年

海外にトレッキングに出かけて、バックパックひとつで何日もテントで過ごすような旅。ネパール、モンブラン、マッターホルン、ヨセミテ渓谷からスタートし、アメリカ本土最高峰のホイットニー山を目指す、全長340kmものロングトレッキングコース『ジョン・ミューア・トレイル』での20日間、ここ数年繰り返し訪れているアラスカ。

「とにかく毎日が楽しかった。こんな遊び方もあるんだ。こんなに素晴らしい自然の中を歩けるんだ。みんなおいでよ。そう素直に思った。」
「歩くという行為はシンプルだけど、とても奥深く魅力的な行為だった。」


女性にとっては少々ハードな旅の中で、大切にしている食のエピソードを中心に紹介しています。
あなたもきっと「ジョン・ミューア・トレイル」に行ってみたくなるはず。

ひとつとなりの山

著者   池内 紀
出版社  光文社新書
発行年  2008年

人気の山の「ひとつとなり」に佇む、静かな山々の味わい。山頂が目的なのではなくて、その土地の歴史に親しみ、登山口に着くまでの地元の人達とのやりとりや、温泉宿での出来事なども含めて、ひとりで歩いた20の山を紹介しています。いや、山の紹介というよりは、麓の山里の紹介と言った方がいいかもしれません。

「つい今しがたへっぴり腰で下った急斜面を、こんどはウンウン言いながら登り返すわけで、登山はまこと不合理と不条理のきわみというものである。」

ちょっぴりへそ曲がりな文章は、思わずくすっと笑ったり、うんうんとうなずいたり・・。
「ひとり登山」を心から楽しんでいる筆者の姿が伝わってきて、こういう歩き方もいいもんだなあ、と思わせる一冊です。

ロミオと呼ばれたオオカミ

著者   ニック・ジャンズ  田口未和 訳
出版社  (株)エクスナレッジ
発行年  2015年

アラスカの町に現れたオオカミと人々との感動の物語。
凍った湖の上に現れては人間や犬と交わり、
いつしか町の人達と仲良くなった黒いオオカミ。
彼の常識を覆す数々の行動と衝撃的な運命を、30年以上オオカミを追い続けてきた著者が描く。
人間と野生動物との関わりのあり方について真摯に問いかける、 傑作ノンフィクション。
あなたもオオカミに対する考え方が変わるかもしれません。

白きたおやかな峰

著者   北 杜夫
出版社  新潮文庫
発行年  1980年(昭和55年)

ヒマラヤ山脈の処女峰ディラン(7273m)に挑む日本の遠征隊にドクターとして参加した著者が、大自然の魅惑と愛すべき山男たちの素顔を描く小説。